今回は2022年に公開された日本のアニメ映画をピックアップしました。
これを選んだ理由はlineのニュースで「夏にみたい映画」として紹介されていたから・・・。とりあえず見てみたという感じです。
原作は八目迷(はちもく めい)さんの同名ライトノベル。
元々は第13回小学館ライトノベル大賞にて『僕がウラシマトンネルを抜ける時』というタイトルで審査員特別賞とガガガ賞をダブル受賞した作品を改題・改稿したものになります。
基本的にはネタバレを含まないようにしますが、個人的感想ではネタバレを含んでいるのでまだ見ていない方は見ないでください。
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あらすじ
主人公・塔野カオルの住む香崎では「ウラシマトンネル」のうわさがあった。
何でも欲しいものが手に入るトンネル、「ウラシマトンネル」。しかし欲しいものを手に入れると100歳年をとるとうわさされていた。
ある日、雨の中遅延した電車を待つ一人の少女・花城あんずと出会い、大事そうに抱えたカバンを見てカオルは傘を差しだす。最初は拒んだあんずであったが、最終的には傘を借りることに。
翌日学校で転校生として現れたあんずは、連絡の手間が省けたとして翌日傘を持ってくる約束を一方的にする。その晩、カオルは酔っぱらった父親に暴言を吐かれ、家を飛び出し線路をさまよい歩き偶然謎のトンネルを見つける。
その中は現実離れをしたきれいな風景が広がっていた。そして、そこには死んだはずの妹・カレンのサンダルと、同じく死んでしまったペットのインコのキイを見つける。
カオルはそこが「ウラシマトンネル」ということに気づき慌てて戻る。現実の世界に戻ってこれたと家に帰ったカオルだが、父親から衝撃の発言が。「次に1週間も無断外泊したら許さない」と。
翌日再度トンネルを訪れ中に入るカオル。すると後ろをつけてきたあんずに見つかってしまう。「ウラシマトンネル」がばれてしまうが、あんずから思わぬ提案を受ける。ウラシマトンネルの共同戦線。あんずはあんずの欲しいもののために、カオルはカオルの欲しいものを手に入れるために。
そしてウラシマトンネルを少しずつ解明していき・・・。
タイトルの意味
今回のタイトルの『夏へのトンネル、さよならの出口』の意味ですが、正直よくわかりませんでした。
特に前半の「夏への」の部分。
「さよならの出口」は作中でアルモノを手放してトンネル向かうシーンがあります。それを指しているのはわかりました。
「トンネル」は勿論ウラシマトンネル。
ただ、「夏への」というのがよくわかりませんでした。
しいて言えば・・・後述で。
キャラと演者
塔野カオル/鈴鹿央士
本作の主人公。不慮の事故により妹を亡くし、母親はでていってしまった。ウラシマトンネルをみつけ、あんずと共同戦線をつくりトンネルの謎を解明していく。
鈴鹿さんは岡山出身。俳優やモデルとして活躍されています。デビューのきっかけは映画ロケのエキストラとして参加した際に、広瀬すずの目に留まりマネージャーにスカウトをするように進言されたことによる。
その後、「蜂蜜と遠雷」で映画初出演し様々な映画賞の新人賞を取得されています。
代表的なドラマ作品としては「ドラゴン桜 第2シーズン」「六本木クラス」などがあります。
花城あんず/飯豊まりえ
本作のヒロイン。歯に衣着せぬ物言いや態度で転校初日から問題を起こす。行動力に優れており、ウラシマトンネルを見つけたカオルと共同戦線をつくり自分の夢をかなえようとする。
飯豊さんは千葉出身のモデル・女優さん。女優としては2012年から活動し、代表的なものとしては「アルジャーノンに花束を」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」といった作品や、特撮ヒーローの「獣電戦隊キョウリュウジャー」などに出演されています。
個人的感想
ここからは盛大にネタバレがあるためまだ見てない人は読まないでください。
映像美
大体のシーンは普通のアニメ映画という絵の様子です。
しかし、ところどころに鮮やかな色使いが入ります。
特にトンネルの中や、夏祭りのシーンでのスーパーボールやりんご飴、花火のシーンはとてもきれいだと思いました。
というか、花火で煙まで書くなんて細かいなと思いました。
それはいいね
冒頭の雨の中の駅の件で、あんずが「親なんていない」といったあとのカオルのセリフです。
それに対してあんずは「ハッ」とした表情をし、それまでの態度と変わりました。
親のいない自分に対して「それはいいね」といったカオルに対して驚いたというよりは、何か自分に近しいものを感じたのでしょう。
本当は自分にも親がいるが自分のことを理解してくれない親のため、カオルもまた親のことで悩んでいると直感的に思ったのかもしれません。
ガラケーって懐かしい
作品をみて思ったのが、「ガラケーって懐かしすぎる」ということと、「なんでガラケー?」というのが印象的でした。
2000年の作品ならまだしも、2022年の作品。原作だって2019年なのになぜ?
これは最後まで見ることで解消ができました。
そもそも設定が2005年であるということ、そしてトンネルの中にいることで
13年という時の変化を経てあんずはしっかりスマホになっていました。
そして、原作にはガラケーは登場しないとか。まだ原作を読んではいないので機会があればよんでみようと思います。
カレンの命日
花火のシーンで8月2日がカレンの命日とされています。その前のシーンでカブトムシを取ろうとして落っこちたとされているのでそれが8月2日だったのでしょう。
ただ、疑問なのが花火のシーンで8月2日が命日という前の「両親が喧嘩した件」はなんだったのかと。一瞬花火の日に亡くなってしまったのかと思い、よくわからなくなってしまいましたが。
かれんの人となりを伝えたかった?何のために?
タイトルの「夏への」の意味
「夏へのトンネル、さよならの出口」
この「夏への」の部分が何を指しているのかよくわかりませんが、これは妹の命日に関係するんだろうなということはなんとなくわかります。
カレンを取り戻す、つまり8月2日で止まってしまったカレンの時間を取り戻すためにトンネルを攻略しようとしていたカオル。
あの夏へ向かうためのトンネルという意味なのかなと思いますが、定かではありません。
駅での再現
あんずの夢である漫画家への道が切り開かれたあとのシーンで、駅でひまわりを傘に見立てて冒頭のシーンの再現がありました。
何気ない風景ですが、その直後にあんずのメールを全て消す様子が描かれていると話がかわります。
最初に出会った思い出を忘れないでほしいという思いだったのか、はたまた今までの思い出を清算するために行ったことだったのか。
一つその後の展開で思ったのが、やはりあんずは追いかけないんだなと。
本当は一緒にいたかったはずなのに。
今までの夢が叶いそうであることを考えてのことなのか。カオルからの「マンガを描いてほしい」という希望のためなのか。
手放した携帯が
トンネルに入りあんずにメールしたあとに投げ捨てた携帯がなぜか家の中で見つかります。
おもわずカオルは「失ったんじゃない、捨てたんだ」と携帯を置こうとしますが、なぜか届かないはずのメールが連投されてきます。
このシーンの直前ではトンネルの中の自分の家で目覚めると子供の姿になったカオルがいました。今までのことを夢だと思いつつカレンとやりとりをするカオルはふと鏡に映った自分を見ます。そこには高校生の姿が映っておりを見つけハッとします。
そこで「ここは一体・・・」と自分を取り戻すシーン。
つまり記憶を失っていたのを取り戻したシーンとも考えられます。そしてさらに、あんずとのあった筈である失った機会を取り戻すというシーンでもあると思います。
だからこそ本来届かないはずのメールが届いた。失ったものを取り戻せたということだと思います。
そして思ったのが傘って6年持つんだということ。(メールが2011年、トンネルに入ったのが2005年。)というか最後には傘を使っているけど13年持つんだと思いました。絶対壊しちゃう。
だいすき、いってらっしゃい
命日の日に喧嘩してカオルが家から出かけるシーンでカレンが
「うそっ、だいすき!いってらっしゃい!」
というシーンがありますが、終盤のトンネルの中での家のシーンでもカオルが出ていくときに
「おにいちゃん、大好き。いってらっしゃい」
というシーンがあります。
完全に意識してかぶせてきたなと思うシーン。
そしてこの二つには明確な違いがありました。
命日の時には「いってらっしゃい」のあとに無言でドアを閉めるカオル。
一方でトンネルのシーンでは「いってらっしゃい」のあとに「いってきます」といい出ていくカオル。
やっと過去をふっきり前に進んでいくという演出を感じる好きなシーンです。
ちなみにその直前のシーンで
「しってるよ、おにいちゃんがあたしのことすっごく好きなの」
というシーンがあります。そこでカオルがハッとしますが、この一言でカオルの中の呪縛が解けたのかなとも思います。
喧嘩別れして、妹にかけた最後の一言が「ぼくも嫌いだよ、じゃあね」というものでした。好きであったことを知ってくれていたんだと思ったのかなと思いました。
トンネルを出ると秋
最後にトンネルから出てくると外は秋の紅葉がはじまていました。
タイトルにふさわしい季節だなと思います。
あの時の夏を取り戻すために入ったトンネル。過去を乗り越えて囚われていた時間から解放されて次に(次の季節に)すすめたということになるのかなと思います。
ところで、あんずが受け取った最後のメールが2013年、つまり2005年から8年後なのに、トンネルから出てきたら「13年と102日」たっていることに。
たしかにカオルが意識を取り戻したりするまでの時間もあるから日にちが進んでいるといえばそうですが、あんずも5年間失踪していたことになるのか~と。
高1の時の話だからあんずは24歳になるのかな??
さいごに
個人的にはしっかりみると結構好きな作品でした。
夏に見たいかといわれるとなんともですが、オールシーズンいつでもいいような気はします。
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