今回は2011年のフランス映画をご紹介します。
基本的にはネタバレを含まないようにしますが、個人的感想ではネタバレを含んでいるのでまだ見ていない方は見ないでください。
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あらすじ
パリに住むドリスは失業保険をもらい生活をしていたが、給付期間が終了間際となった失業保険をもらえるように面接を受ける。面接に行ったのはパリに住む富豪のフィリップの介護者を決めるものであった。ドリスは合格をするつもりはなく、不合格になったことを証明する書類にサインをしてほしいだけだった。
フィリップは頚髄損傷で首から下の体を動かすことができない。気難しいところのあるフィリップは他の候補者のことは気に入らず、なんの資格もないドリスをあえて試用期間を設けて採用する。
そうして二人の生活が始まっていく。
タイトルの意味
邦題の「最強の二人」はもちろんドリスとフィリップのことをさします。
ではなにが最強なのか。
おそらくこれはフィリップ視点でみていると思っています。
今まで世話人となった人たちと違ってフィリップにとってドリスは本当に心を許せた人なのでしょう。
フィリップ視点とすると俗っぽい言い方ではありますが、ドリスに感化されていく様子をみるとしっくりくる言い方だと思いました。
ちなみに原題は「intouchables」で日本語にすると不可触。つまり交わりえないという意味になります。
本来であれば上流階級のフィリップと貧困層のドリスは交わることなく過ごすはずでした。
交わることのなかった二人としてはふさわしい原題ですが、最終的には交わっており日本語版のタイトルの方がしっくりくる気がします。
実は本当にあったエピソードをもとにしている
この映画、実は本当にあった実話をもとにして作られています。
いくつかの点で実話と映画は異なります。
ドリスは映画ではアフリカ系ですが、実際は「アブデル・ヤスミン・セロー」という名前のアルジェリアの出身の人だったようです。
しかし無免許で運転をしていたりと史実であることも織り交ぜられています。
また、窃盗や暴行などで刑務所に入っていたことや、面接に来た時に失業保険のための就職活動の証明のサインをもらいにきたことも実際の出来事だったようです。
では、フィリップはどんな人だったのか。
本名は「フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ」という名前のフランス人実業家です。
フランス名門貴族の家系に産まれ先祖代々の資産家で、パラグライダー中の事故により四肢麻痺となっており映画そのままです。
そしてこの作品の原作の著者でもあります。つまり自分の介護者との体験をそのまま作品にしたということです。
原著は『Le second souffle(第二の呼吸)』という作品です。
個人的感想と見どころ
ここからは盛大にネタバレがあるためまだ見てない人は読まないでください。
最初の5分
カーチェイスによるシーンから始まり、正直最初はおいていかれました。
「えっ、どうなってる?」といった感じ。
ただ、カーチェイスのシーンは普通に疾走感あふれておりまぁまぁ見ごたえが。
そして、警察に包囲されたときのドリスの「うまく切り抜けられたら200ユーロ」という発言。どんだけ余裕があるんだと。
実際切り抜けられるのですがフィリップの咄嗟の対応も抜群でした。
あんなんみたら普通にびびるね。
ドリスの採用
この作品の一番の不思議はなぜドリスが採用されたのかというところです。
最初の印象からしてどう考えても不採用。というか、そもそも何の面接かもわかっていないんじゃないかという印象すら受けます。
だって、頚髄損傷で動けない人の介護者の面接のはずなのに、サインがすぐにできない理由を聞くくらいですからね。
しかし、実際には採用をされています。それはなぜか。
映画では明確にその採用理由は描かれていませんが、障がい者として扱う他の面接者と違い、媚びへつらうことなく普通の人として接してくるドリスに惹かれたのかもしれません。その後に「同情はいらないよ」という場面もありました。
フィリップ役の演技
フィリップ役のフランソワ・クリュゼさんの演技がとてもすごいなと思いました。
感情の変化の表現だけでなく、なによりもすごいと思ったのが身体的なもの。
頚髄損傷で首から下が全く動かないという役柄ですが、見事に演じ切っていたと思います。
ドリスによって最初にベッドから車いすに移動させてもらうときにも、腕の脱力だけでなく、足の脱力具合も完璧でした。
そしてそのあとの車いすから前のめりに倒れるシーン。本当に自然に倒れています。本当にすごい。さすがプロ!
ドリスの変化
当初はフィリップのことを雑に扱うことが多いドリスでした。
フィリップをベッドから車いすに移動させるときも力づくで本人の安全性は考えていないような感じでした。
マッサージも適当で携帯をいじりながら行ったり、なんなら温痛覚がないことから熱湯をかけてみるという危ないこともしていました。
しかし、徐々にフィリップへの対応が変わります。口の悪さは変わりませんが・・・。
しかし、体の持ち上げ方もしっかりするようになり、マッサージもしっかり両手を使い一生懸命に行っています。
それまでの粗暴なだけのイメージからちゃんとした大人になったという印象です。
その比較になるのが、フィリップの家の前の違法駐車(停車?)の人への対応の仕方。
初期は運転手から携帯を奪い捨て車から引きずりだし、頭を鷲掴みにして標識を大声で読ませていました。しかし、最後は紳士的に対応し一切の暴力なしで解決をしています。
ちゃんとした仕事や環境に身を置くことでだれもがいい方向に向くということなのかもしれません。
フィリップの変化
最初ドリスを使用期間で雇ったところまではお堅いイメージでした。
特に採用面接の時。ドリスの前の人では顔色変えず聞いている姿が印象的。ドリスの時も前半はほぼ無表情でした。
しかし雇用後は徐々にドリスに心を開くだけでなく、話し方や言葉使いもドリスよりになっていきます。
ブラックジョークでさえ言うようになります。
また、文通を半年続けていた相手と電話を勧められた時は嫌がりましたが、一回強制的に電話をさせられてからは電話でのやり取りをするようになりました。
それまでの価値観がどんどん変わっていく様が見られます。
冒頭でのシーンではあんな紳士が涎を垂らしながら発作の振りをして警察をだますというシーンまで。だいぶ印象が変わっています。
今までにいなかったタイプと過ごすことで世界が広がったのかもしれません。
しかもたばこを吸ったことなかったような感じでしたが後半はたばこを吸うシーンも増えました。
二人の別れ
終盤でフィリップはドリスを解雇します。
なぜなのか。
それはドリスのもとにドリスの弟がきたことによるところが大きいと思います。
フィリップは自分の娘に向き合いました。
ドリスにも自分の弟に向き合ってほしかったのだと思います。
自分の介護者として雇っている間は自分の元に縛ってしまう。だからこそ、解雇することで家族の元に返したいという気持ちがあったのだと思います。
代わりの介護者との比較
次にやってくる介護者はドリスとは全く違う性格の人でした。
案の定フィリップは新しい人に満足ができていない様子。
印象的なのは食事のシーン。
「よければ食事をさしあげましょう」という言葉。翻訳の都合かもしれませんが、何か上から目線。
そして次のヘッドマッサージの出張が来たシーンでは
「朝から期限がわるいんですよ」と、その理由は聞かずにフィリップが悪いように扱ったり。
発作のシーンではいわれるがままに部屋を出ていく。
ドリスがフィリップに友人のように接しているのに対して、新しい人はまさに仕事でいわれたことを行うという印象でした。
その後ドリスが着た後は笑顔が戻っているのも印象的。やはり、障がい者としてではなく一個人として扱ってくれるドリスが一番いいのでしょう。
さいごに
個人的には色々と考えさせられる良い作品でした。
障害があろうがなかろうが人は人。
障害があるからと特別扱いをされることを良しとしない人もいる。
そう思うと、過度な特別扱いもよくないのかなと思いました。
一人の人間としての接し方の上での対応がもとめられるのだと。
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