雑記で書くことがないときに逃げ場として書こうと決めたお酒シリーズ第3弾。
今回は今まで書いたビールやワインと同じく、醸造酒として分類される日本酒についてまとめていきたいと思います。
日本酒の分類は様々
日本酒の種類といっても分け方がかなり複雑に色々ありました。
分け方としては以下のものがあります。
- 材料による分類
- 精米歩合による分類
- 火入れによる分類
- 酵母による分類
- 搾り方の分類
- 搾りで造られたタイミングでの分類
- にごり酒の分類
といった具合に分かれます。
頭が痛くなりそうですが、一つ一つ見ていきましょう。
まずは作り方
まず原材料となるお米の精米から行われます。醸造の過程においてお米に含まれるたんぱく質や脂肪は雑味の原因となります。これらの成分はお米の外側に多く存在するため、まずこれを削っていきます。十数時間から長いと4日程度かかります。しかし、削りすぎるとお米の品種の個性が生かしにくくなったり、発酵を促す成分も失われるので後の工程で高い技術が必要となります。
精米されたお米はその摩擦で熱を帯びるため、次の工程へ進むには米の質が安定しないため袋にいれて倉庫の中で暫く覚ます必要があります。これを放冷または枯らしといい、完全にお米がおちつくまでに3~4週間かかります。
精米されたお米はその工程で糠や米くずがつくため洗米をし除去します。高級酒を造る場合は手作業で行われ、5℃前後の冷水で10㎏ずつ洗います。この工程中にもお米は水分を吸収し始めます。
現れたお米は浸漬といい、水に漬けて水分を吸わせる工程へと移ります。目安としては米粒の中心部まで透き通らせます。どれだけ水を吸わせるかによって、出来上がりのお酒の味が変わってきます。高級酒ともなるとストップウォッチを使用して秒単位まで厳密に管理されるそうです。
浸漬後はそのお米を蒸していきます。外側はパサパサとし、内側は柔らかいのがよいとされています。これは外側が溶けているとコウジカビの定着前に腐敗がおこる恐れがあったり、内側が固いと菌糸の成長が抑えられ糖化・発酵がおこらない可能性があるからです。
蒸したお米にコウジカビの胞子をふりかけて麹造りを行います。これにより糖化の働きをさせます。この過程は麴室と呼ばれる特別な部屋で30℃以上、湿度60%を保つように調整されています。
また、同時に酒造りに必要な酒母造りを行います。これは酛桶と呼ばれる桶ないしタンクに麹と冷水をいれよく混ぜた水麹を作り、醸造用乳酸と酵母を少量、蒸し米を加えて仕込みを行います。2週間から1か月程度まつと酵母が大量に培養され、これを酒母と呼びます。
酒母、麹、蒸米、水を3回にわけてタンクに入れて発酵させる醪造り(もろみづくり)にうつります。この工程で麴によりコメのでんぷんが糖にかわり、それが酵母によってアルコール分解されていきます。同時に変化させていく方法が日本酒の特徴であり、これを並行複発酵と呼びます。
醪を作り次の工程に行く前にアルコール添加が行われます。すべての日本酒で行われるわけではないですが、30%程度に薄めた醸造アルコールを添加することがあります。これは次の上槽という過程の2時間~2日前に行われます。
醪から生酒を絞る工程を上槽といい、この過程で残る固形分が酒粕となる。
上槽を終えた酒はにごりがあるため、にごりを取り除くためにまつことを滓下げ(おりさげ)という。
滓下げの施された生酒の中にまだ残っている細かい滓や雑味を取り除く工程を濾過という。
醸造した酒を加熱して殺菌処理を施すことを火入れといい、乳酸菌の一種である火落菌や酵母、麹を失活または殺菌することで酒質を安定させる。
火入れを行わないで酒の旨み、まろみ、味の深みなどを引き出すために貯蔵される工程を熟成といい、出荷の直前に酒のアルコール度数をさげることを目的に加水調整用水を加える作業を割水という。
上記の過程を経て、瓶の中へ瓶詰めされ出荷される。
以上の工程説明の太字が工程名になります。
材料による分類
純米酒
米と麹、水だけで作られた日本酒。
醸造酒
米、麹、水以外に醸造アルコールを添加して作られた日本酒。
精米歩合による分類
純米酒と醸造酒をさらに細かく分けると下記のように分けられます。
純米大吟醸
純米酒であり、精米歩合が50%以下であるもの。
独特のとろみ感と口の中でまとまりつくような雑味のない品のある味わいが特徴。
純米吟醸酒
純米酒であり、精米歩合が60%以下であるもの。
混ざりもののない米だけの味わいを楽しめる。
特別純米酒
純米酒であり、精米歩合が60%以下もしくは作り方に特別な工夫があるもの。
多くの場合、精米歩合が60%より少し高い精米歩合でお酒を造ることが多いよう。
純米酒
特に精米歩合に制限のない純米酒。
米の旨味やお酒本来の自然な香りを存分に楽しめるお酒。
大吟醸酒
醸造酒であり、精米歩合が50%以下のもの。
香りと透明感、みずみずしさを感じさせる日本酒が多い。
吟醸酒
醸造酒であり、精米歩合が60%以下のようなもの。
晩酌向けに食事と合うお酒というコンセプトで造られていることが多い。
特別本醸造酒
醸造酒であり、精米歩合が60%以下もしくは特別な製造方法であるもの。
シャープですっきりした味わいや滑らかな口当たりを追求しているものなど、工夫がみられることが特徴。
本醸造酒
醸造酒であり、精米歩合が70%以下であるもの。
火入れによる分類
日本酒を作る工程にある火入れ。その回数によっても分類があります。
清酒
瓶詰をする前に2回の火入れを行う。火入れの回数としては一般的。
瓶詰前に1回、瓶詰後に1回とすることもある。
生貯蔵酒
火入れは瓶詰の直前の1回または瓶詰後の1回のみ。
一般的に「生」として流通をしている。
生詰め
火入れは貯蔵前の1回のみ。
生酒
火入れを1回もしないもの。
「生貯蔵酒」「生詰め」とは異なり、本当に生のまま。「生生」「本生」とよぶこともある。
酒母による分類
酒母による分類は3種類に分けられます。
そもそも酒母はどうやって作るは前述の工程を参照してください。
速醸仕込み
酵母菌以外の雑菌が繁殖しないようにするために人工的に乳酸を加えてつくった速醸酛を使用した日本酒。
特徴としてはくせがなく、香り高いさっぱりした味わいになります。
生酛仕込み
空気中の乳酸菌を利用して、自然な乳酸を利用することが特徴です。
雑菌の繁殖を避けるために厳寒期の深夜に行われ、この作業を「山卸し」といいます。
作業の内容としては空気中の乳酸菌を、麹を混ぜた蒸し米ミックスに取り込むために桶の中で櫂を用いて練ったりすりつぶしたりして、どろどろの状態にします。
コクと旨味があり、すっきりした飲み口となります。
山廃仕込み
生酛仕込みであった山卸の作業をなくしたのが山廃仕込みです。代わりに麹を水に浸しておくことででる酵素がにじみ出ます。この液体を蒸し米にかけまわして作ります。
濃厚な旨みが特徴です。
搾り方の分類
日本酒を作る工程の上槽での作業の違いにより下記のように分類されます。
槽搾り(ふねしぼり)
古来からある伝統的な搾り方で、船に似た形の細長い箱を作り、そこに醪を入れた酒袋を入れて圧力をかけて搾る方法です。
大吟醸などを作るときに向いているようです。
雫搾り
別名袋吊り。酒袋を吊るして滴りおちてきた雫を集める方法。
上質な日本酒を作る際に用いられ、雑味が染み出てくることがほとんどなくすっきりした味わいになります。
ヤブタ式
自動圧搾ろ過機を使用して酒を絞りだす方法です。
圧がかかることでしっかり搾れるため量が多くとれます。ただ、雑味は増えるので繊細な大吟醸を作るにはむかず、普通酒や本醸造には適した方法です。
遠心分離
容器にいれた醪を高速回転させることで余分なものを沈殿させ、上澄みをとる方法になります。
回転数を変えることでにごり酒を造ることも可能です。
また、他の方法では酒袋にいれるため、その匂いや雑味がうつうることがありますが、この方法では酒袋を使用しないので雑味や匂いの移りがなく、日本酒本来の味や香りを楽しめます。
獺祭がこの方法を用いています。
搾りで造られたタイミングでの分類
あらばしり
搾るさいに一番最初に流れ出てくるお酒を瓶詰したもの。つまり「一番搾り」。
フレッシュで濃厚な風味があり、濾されなかった醪成分が混じるため白く濁ります。
中汲み
あらばしりの次に絞られたお酒を瓶詰したもので、白濁がなく澄んでいる。
もっとも良質な部分となる。
責め
上記2つの残りを絞ったお酒。アルコール度数が高く、雑味は多いが風味はある。
にごり酒の分類
活性にごり酒
醪を濾過したあと、火入れをすることなく酵母が生きた状態で瓶詰をしたもの。
瓶内で発酵が続くため発泡感と爽快なのどごしを楽しめる。
うすにごり・ささにごり
にごり酒のなかでも白濁が少ないものをさすが、明確な定義はなし。
醪を絞る際に比較的細かい目のものを使うと色合いが薄くなる。酒の中に残る澱の量が少ない分あっさりと飲みやすい。
澱酒・おりがらみ
滓引きや濾過をせず、澱ごと瓶詰したもの。
原料の米や酵母由来の、コクのある風味をたのしめるのが魅力。火入れを行わない生酒タイプでは、微発泡性のものもある。
コメント