『素晴らしきかな、人生』のすすめ

本・映画

今回は2016年に制作されたアメリカ映画の『素晴らしきかな、人生』(原題:Collateral Beauty)をお勧めします。

ちなみに1946年に制作された「素晴らしき哉、人生!」(原題:It’s a Wonderful Life)とは違うものになります。

ただ、製作/脚本のアランさんによると、「素晴らしき哉、人生!」を参考にしているとのこと(自分はこっちはみていないですが)。

とても良かったので是非皆さんにも見ていただければ!

あらすじ

ニューヨークの広告代理店でカリスマ経営者として働くハワード。すべての人は「愛」「時間」「死」に3つの抽象的な概念でつながっており、愛を求め、もっと時間が欲しいと思い、死を恐れ、そこから人は物を欲しがるという経営理念をもっていた。それから3年後、ハワードは働く意欲を失い抜け殻のような生活を送るようになってしまった。半年前に一人娘を亡くしたことがきっかけでした。ハワードを見かねてクライアントたちは取引から手をひきはじめ、会社の買収の話まで出始めた。しかし、株の大半を所有しているハワードの許可なくして買収話を進めることはできない状態であった。共同経営者であるホイットとハワードの部下であるクレア、サイモンは買収話を進めると同時にハワードが精神的困難である状態であり議決権が行使できないという証拠を押させるために探偵を雇う。しかし、決定的なものはなく代わりに郵便ポストに「愛」「時間」「死」という抽象的概念宛に怒りと悲しみをつづった手紙を出していることが分かった。そこでホイットはとある劇団員たち3人に「愛」「時間」「死」の役を頼み接触してもらうことを画策し・・・。

タイトルの意味

『素晴らしきかな、人生』は邦題になり、『Collateral Beauty』が原題となります。

Collateralとは「付随的な」という意味を持ちます。つまり直訳すると「付随的な美」。ちなみに吹き替え版で「幸せのおまけ」と訳されているのが「Collateral Beauty」なのです。

キャスト

ハワード役:ウィル・スミス

以前の記事でもご紹介させていただきましたが、過去にアカデミー主演男優賞の受賞1回、ノミネート2回、ゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネート3回という経歴。

代表作としては「インデペンデンスデイ」や「メンインブラック」などがあります。比較的最近のものとしてはディズニー映画「アラジン」の実写版でジニー役でも出演をしています。

ホイット役:エドワード・ノートン

アメリカの俳優でもあり監督もしている方になります。

代表作には、『真実の行方』や『バードマン あるいは』などがあります。

『真実の行方』は映画デビュー作品であり、多重人格障害の疑いがある殺人容疑者役を演じてゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しています。

全部でアカデミー主演男優賞に1度ノミネート、助演男優賞に2度ノミネート、ゴールデングローブ賞助演男優賞は2度ノミネートされうち一回受賞をしています。

エイミー役:キーラ・ナイトレイ

イギリスの女優さんで、元々学習障害であるディスクレシア(識字障害)を患っていたようです。その後10代のときには克服をしているよう。

代表作としては『スター・ウォーズ エピソード1』『パイレーツオブカリビアン』、『イミテーション・ゲーム』などがあります。

今までにアカデミー主演女優賞に1度ノミネート、助演女優賞に1度ノミネート、ゴールデングローブ賞主演女優賞に2度ノミネート、助演女優賞に1度ノミネートされた経歴があります。

クレア役:ケイト・ウィンスレット

イギリスの女優で、祖父母や両親、叔父、姉、妹も役者とのこと。

代表作としては『タイタニック』『愛を読む人』『リトル・チルドレン』などがあります。

今までにアカデミー主演女優賞に4回ノミネートされうち1回受賞、助演女優賞に3回ノミネート、ゴールデングローブ賞主演女優賞に5回ノミネートされうち1回受賞、助演女優賞も5回ノミネートされ2回受賞という経歴を持っています。

個人的感想と見どころ

ここからは盛大にネタバレがあるためまだ見てない人は読まないでください。

3つの概念と3人

この作品では3つの概念である「愛」「時間」「死」を中心に話が進んでいきます。

最初に出たのはハワードの演説ででした。この3つの概念を味方につけて仕事を頑張ろうということでした。しかし、娘を失ってからはその3つの概念を恨むことになります。

「愛」「時間」「死」という3つの概念に対してエイミー、ラフィ、ブリジットがそれぞれの役を演じます。そして、ハワードの同僚であるホイットは「愛」のエイミーと、クレアは「時間」のラフィと、サイモンは「死」のブリジットとペアを組んで作戦を練っていきます。

そして、3人の役者ではなく、3人の同僚がまさにそれぞれ担当した概念に対しての問題がありました。

ホイットは不倫を起こし離婚をします。そして愛娘から嫌われてしまいます。一時の愛(があったかはわからないけど)で大切な愛する娘を失ってしまったホイットはその娘から「もう会わない」といわれてしまいます。

クレアは一生懸命に働き、会社にすべてをささげ独身を貫きました。しかし、作中で度々クレアは精子バンクのサイトやパンフレットを見ていました。子供を欲しているクレアには出産年齢という時間に迫られていました。

そして、サイモンは若いときに多発性骨髄腫に侵されていました。一度は抑え込めたものの子供が生まれる2週間前に再発し既に末期の状態、つまり「死」がすぐそばに近づいている状態だったのです。しかし、家族に心配をかけられないサイモンは誰にもそのことを告げられないのでした。

そしてこの3人はそれぞれの役者とハワードのおかげでその問題を乗り越えていきます。

ホイットはエイミーとの取引とハワードの言葉で勇気を出して娘と向き合い、ほんの少しですが娘の心を開くことに成功しました。

クレアは「時間に追いつかれた」と子供を産むことを諦めますが、ラフィから「子供は自分が生んでなくてもいい、人生を共有できれば。だから時間との闘いはまだ終わっていない」と諭されます。タイムリミットという時間に囚われて子供を諦めるのではなく、産むのではなく育てるという方法で子供を得るという考えに至ります。

サイモンは妻に病気のことを話すことができました。何故できたのか。それはブリジットから言われたからかもしれませんが、「死」に対しての恐れを克服したからかもしれません。

亡くなっていることへの署名

ハワードが売却の承諾書にサインをしたときに、同僚3人が知らない書類がもう一枚出てきます。その書類は、株の所有権の一部が娘の信託財産であったため「亡くなっている」ということを証明する書類でした。

ハワード自身がその書類を出すように言いサインをします。

その書類にサインをするということはそれはすなわち子供の死を受け入れなければならないということ。

ただ、その後のマデリンとのやりとりでは、まだちゃんとは受け入れられていなさそうにも見えました。その中、同僚のためにも書類にサインをしたとすればとても辛かったことでしょう。

サインの直前に「だが、明日があると思うな」とホイットに言うあのシーンは重みがありました。

ハワードとマデリンの出会い

「死」と接触したあとのハワードは集会に参加することにします。それは以前から窓の外から眺めていた「小さな翼の会」という遺族の会でした。そこを取り仕切っていたのがマデリンという女性でした。彼女はオリビアという6歳の娘を多形成膠芽腫という悪性の脳腫瘍を患って亡くなったことが語られます。

当初ハワードはこの女性との交流を通じて、また3つの概念の役者を通じて娘の死を乗り越えるのだろうと思っていました。しかし、それが最後になって違ったことを知った時は衝撃的でした。

まさか元夫婦とはね!最初の出会いのシーンで名乗ってたじゃん!マデリンがハワードに名前を聞いたときはみんなの前だから自己紹介としてわかるけど、その後マデリンが名乗る時は二人っきりだったのに!

それは「もう一度他人に戻れたら」という手紙を受け取ったからちゃんと他人を演じた結果なのでしょうが。

もう一度見返すと気になるところがありますが、1回目では気づけませんでした・・・。

3人の役者は本当に役者?

最後まで見終わるとハワードとマデリンが公園を歩いているシーンがでてきます。そこで橋の下を通る二人を見守る3人の役者が橋の上にありました。しかし、ハワードが振り返るとそこに3人の姿がうつりますが、マデリンが振り返ると姿は無くなっているのです。

そもそも最初にその3人が出てきたシーンを思い返すと、オーディションにきていたエイミーがたまたまホイットと出会い、キャッチコピーを変えるように提案したことが始まりでした。それを気に入ったホイットがエイミーに待つように言ってその場を離れ、戻るとエイミーが足早に会社を去っていくところを追いかけ、その先に3人がいました。

1つ目の疑問

「何故オーディションに来たのにオーディションも受けずに帰ったのか?」

普通オーディションを受けに来たのに受けずに帰ることがあるでしょうか。自信を無くしたわけではなさそうであり、時間がないならそもそも来ないでしょう。まるでホイットを自分たちのもとに連れてきたいかのようでした。

2つ目の疑問

「何故3人しかいないのか?」

ホイットが追いかけた先は資金難で公演ができないという劇団。しかし、いくら資金難と言えども役者3人だけで公演を考えるでしょうか?小道具は事前準備だとしても、照明もなく音響もなくで?まぁこれはある可能性がありますが、都合よくの3人というのが気になります。

3つ目の疑問

「「やったわね」というブリジットの言葉」

ホイットが最初に訪れたときのやりとりの最後にブリジットがエイミーにぼそっと言います。単純に資金が手に入りそうだからそういっただけなのか。ただ、本当にそうだとしたら、報酬を受け取ったラフィとブリジットの行動が矛盾します。ラフィはお金を受け取ったときに役者の学校よりもデザイナードラッグを買おうとしたり、ブリジットは「これをやっちゃったからあの舞台はもう死んだ」と当初の舞台を行うことをやめました。

そもそも、本当に舞台の資金を手に入れるなら個々でうけとるのではなく、劇団としてうけとるのではないでしょうか?

4つ目の疑問

「ホイットに娘がいるということをなぜか知っていたエイミー」

ホイットも思わず「その話した?」と聞いていますが、確かに作中ではその話はなかったような・・・。ふつうの役者が本人が話していない内容を知っているのだろうか?ネットで調べた?

役者ではないなら何?

詐欺師という可能性も勿論(?)ありますが(まぁないでしょうが)、マデリンが振り返った時に消えていたのではなく「見えていなかった」としたら。

もしそうなら普通の人間ではないということに。本当に「愛」「時間」「死」の概念そのものだとしたら。

ブリジットがオリビアが亡くなる時にマデリンの元に現れたのも納得がいきますが、果たして・・・。

さいごに

今回は『素晴らしきかな、人生』についての紹介をさせていただきました。

皆さんも是非一度見てみてください。

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