今回はジャンプ+で掲載され、現在Amazon prime videoで無料視聴ができる『ルックバック』についてのおすすめ記事になります。
第97回アカデミー賞の長編アニメ映画賞のノミネート対象作品にもなったようでありその行方も気になるところ。
あらすじ
小学校4年生の藤野は学年新聞で4コマ漫画を毎週掲載していました。ある日、その枠の一つを引きこもり中で学校に来ていない「京本」に譲ってほしいと頼まれます。
当初は引きこもりに対して見下していた藤野だが、京本の作品が掲載されるとその画力の高さに藤野は屈辱を覚えます。「京本のやつ、私が学校行っている間絵の練習しているんだ」と対抗心を燃やし絵の練習を始めますが、それでも京本の画力にはおいつかず挫折します。
小学校の卒業式の日、先生から京本へ卒業証書を届けるよう頼まれます。そして藤野は初めて京本と対面することになり。
タイトルの意味
「ルックバック」は日本語に直すと「振り返る」という意味になります。また、「バック」には背中という意味があるので「背中を見て」という意味にもなります。
ネタバレになるため詳しくは書けませんが、この作品ではある時において過去を振り返るシーンがあります。「あの時にこうであったなら」というifストーリーがでてきます。そういう意味でも「ルックバック」というタイトルは意味を成し得ます。
また、「背中をみて」という意味合いで考えると、作中では様々な「背中」が出てきます。その代表としては藤野の京本へのサイン。彼女は背中にサインをします。サインをしたのは京本から藤野への憧れがあり、京本が絵を掲載しようと思ったのも藤野の作品を見てでした。つまり京本は藤野の背中を追っていたのです。その後も二人が行動を共にしていくようになった時も常に京本は藤野の背中を追うように一歩下がって行動をしています。
さらには、「バック」には背景という意味もあり、作者の藤本さんは「背景を見てほしい」というメッセージも込めていたと明かしているようです。
作者
作者は藤本タツキさんになります。
他のマンガとしては「チェンそーマン」が有名かと思います。
他にも、ジャンプ+で連載していた「ファイアパンチ」という作品もあります。
ファイアパンチ連載前から「藤本タツキの妹で小学3年生のながやまこはる」という設定でTwitterに投稿していたそうで、そのアカウントを発見した担当編集者から、関係者を騙る危険なアカウントを訴えようと思っていると相談をされた過去があるようです。正体が自分であるとその後明かしています。そのアカウントは2022年11月に1度凍結されましたが、その後凍結が解除されてからは再度「ながやまこはる」としてSNSに投稿を続けているというおちゃめ(?)な部分も。
個人的感想と見どころ
ここからは盛大にネタバレがあるためまだ見てない人は読まないでください。
調子に乗ってるだけのやつかと思ったら超努力家
「藤野ちゃん今週の4コマも面白かったよ」と言われたときの藤野の「あ~これ、時間がなくて5分で書いたんだけどね~」という反応や、京本に1枠ゆずってほしいという先生からのお願いに対して「ちゃんとした絵をかくのには素人には難しいですよ」と上からの発言。
めっちゃ調子に乗っているやつやんとおもったら、絵のレベルを見せつけられそこから猛勉強するシーンが。
意外と努力家な一面があるんだなぁと思ったら、最初のシーンでもネタ帳が写っていたり。ちゃんと最初から努力してるじゃん!
努力する背中
そんな藤野が絵の勉強に取り組んでいるシーンでは、初めは横から、その後は正面から描かれます。
表情豊かに努力しているシーンが続いたかと思うと、その後は家と学校(外)でひたすら書き続けているシーン、そして四季を通じて書き続けている後ろ姿が描かれます。
タイトル通り頑張り続けている「背中をみる」形になります。
友達のこころない一言
「そろそろ絵書くの卒業したほうがいいよ」「中学になっても絵書いてたらさ、お宅だと思われてきもがられちゃうよ」
この一言はひどい。藤野を思ってかもしれませんが、本人にとっては余計なお世話。というかめっちゃ心をえぐられます。
一生懸命やってることをきもいなんて言うな!って感じですね。
こういうのがいじめの温床になるんだろうなぁ。
京本の親って?
作中通して何度も京本の家のシーンがありましたが、一度も京本の親が出てくる描写はありませんでした。まぁ、本編には不要なキャラなのでしょうが。
ただ、藤野の家に入り浸っている、というか住んでいるに近そうな感じ。藤野が学校から帰宅したときにはすでに部屋にいて、夜も電気つけて作業をするくらい遅くまではいて。
引きこもりの次は家出に近いけど親はいいの!?ってちょっと思いました(笑)
一応「メタルパレード」が佳作になったあとのシーンで母親と通帳を作ったという描写がありますが。
京本の中での藤野
京本は小学校3年生の時から藤野に憧れを抱いていました。
転帰は小学校の卒業時。
二人がちゃんとであったのがこの時でした。その時には京本は藤野からサインをもらうほどのファン。
初めての読み切り作品を二人で作り、持ち込んだ時も、雪降る中でコンビニに行くときも、街で遊ぶ時にも常に藤野が京本の手をとり先頭に立ちリードをしているようにみえる描写となっています。
そして、二人が手をつないでいる描写がアップでも映し出されます。
初めはしっかりと握られていた手も、様々な読み切りを書いた後の秋の田園を歩いていくシーンでは握られていた手が徐々に離れていき指一本でつながるという描写に変化。
その後に「背景美術の世界」という本に魅入られ、美大への進学を決意します。
美大への決意は「藤野に頼らないで一人の力で生きてみたい」という思いが根底にあったようですが、どちらかと言えば京本の中では藤野との差を感じるようになっていたのでしょう。それが「もっと絵、うまくなりたいもん」に込められている気がします。これは昔に二人で話していた画力up=スピードupの話につながるのだと思います。
ただの憧れから藤野の右腕として成長して役に立ちたいという彼女の思いだったのでしょう。それがあんな結果になるなんて・・・。
ifの世界
自分が部屋から出さなかったら京本はしななかった。
と、藤野が後悔をするシーンがあります。
びりびりにやぶいた4コマの1コマ目が扉をすり抜けていきます。その行先は小学校卒業式の日の京本の部屋。
「出てこないで」というコマだけが通っていき、それに従って京本は外に出ずに藤野と会うことがなく過ぎていくという世界線でした。
結果、京本は同じ美大に通うことになり通り魔に襲われるものの、漫画家にはならずに空手を続けていた藤野によって助けられて命を失わずに済むというものに。
個人的にはちゃんと外に出てこれたならその世界線もありかなとは思うものの、二人の中のあの楽しかった思い出が生まれることがなかったと思うとそれはそれで勿体ない気も。助かる世界線ではこれから二人の思い出がうまれていけばいいなぁと。
というか、藤野が引っ張り出さなくてもちゃんと脱ひきこもりできてて素晴らしい。
京アニ事件との関連
2019年に起こった京都アニメーション放火殺人事件との関連性がマンガ公開時から言われていた作品。
作中の美大での殺人事件の犯人は「作品をパクられた」として犯行に及び、京アニ事件でも過去の投稿作品がパクられたとして70人の死傷者を出した事件でした。
事件があった2019年7月18日に対して、作品が発表されたのは2021年7月19日と月日が近いとして注目を集めました。
作者も藤野同様にその事件を茫然自失で見ていたのかもしれません。
それでもあえてそのタイミングで作品を世に出した、そして「ルックバック」というタイトルをつけたのにはどんな意味があったのか。
ネット上でいわれるのが、「Don’t」と「in anger」です。
残念ながらAmazon prime videoでの作品では確認ができませんが、漫画版の1コマ目には黒板に「Don’t」の文字が。
その後に続く文は見れませんが、これにタイトルである「ルックバック」そして、原作の最後のコマに描かれているとされる「in anger」を足すと「Don’t look back in anger.」、つまり「怒りをもって振り返らないで」「悪い思い出にしないで」という意味になるようです。
出典:ジャンプ+ 『ルックバック』
つまり、京アニ事件とこの話の中の事件をだぶらせつつも、過ぎたことに対していつまでも悲しまずに次に進んでいこうという作者の気持ちが込められているのかもしれません。
ちなみに残念ながら「in anger」についてはやはり映画版では描かれていないことと、原作は現在ジャンプ+で途中までしか読めないので確認ができていませんが、ネット上の画像検索では確かに書いてあるようです。
さいごに
今回は『ルックバック』についてのおすすめ記事とさせていただきました。
是非皆さんも一度みてみることをお勧めします。
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