『still dark』のすすめ

今回は2019年の日本映画で短編映画の『still dark』の紹介記事になります。

この映画は盲目の青年が主人公になっており料理人を目指すお話になります。

DVDはなさそうで、アマプラで無料でみることができるので良ければどうぞ。

あらすじ

主人公・ユウキは目が見えない青年であったが料理人を目指していた。前日に食べたナポリタンの味に感動し「Aasu」というお店で働くことを希望する。店長からは反対されるも、必死に頭を下げて見習いとして働くことを許されます。しかし、1か月後の試験に合格できなければお店を去らなければなりません。仕事をしながら夜は同い年の先輩のケンタにナポリタンの作り方を教えてもらい毎日を過ごす日々。徐々に皿洗いの仕事から野菜のカットを任されるようになっていくユウキ。しかしナポリタンを作る工程には様々な壁があり・・・。修行を経て遂に運命の試験の日を迎えたユウキは・・・。

タイトルの意味

『still dark』は直訳すると「まだ暗い」。

視覚障害があるからという理由ではもちろんないでしょう。

この映画を最後まで見てみると「そういうことかぁ」と思うかもしれませんが、ネタバレになってしまうのでここでは書くのは控えておきます。

キャスト

ユウキ役:髙橋雄祐

新潟出身の俳優で、今作も含めて何作かの短編映画に監督として参加をしています。

代表作には『透明花火』や『初めての女』、『あいが、そいで、こい』などがあります。

過去に目をケガして飛蚊症を患っており、けがをした当時は網膜剥離で失明の可能性があるといわれたことがあるようです。その経験で今回の作品を考え付いたとのこと。

他の方は調べてもでてこなかったです・・・。

個人的感想と見どころ

ここからは盛大にネタバレがあるためまだ見てない人は読まないでください。

主役の演技がうまい

ユウキ役の髙橋さんは視覚障害の役を演じているだけで普段は勿論見えている人。

しかし、本当に見えていないかのようにふるまいます。

歩くときは勿論のこと、会話をしているときも相手と視線を合わすことなく会話をしています。

印象的だったのはケンタに料理を教わる最初のシーンでお湯を沸かしているシーン。沸かしている時もどこを見ているかわからない視線。その後の鍋の移動のときもお湯を捨てる時も、鍋の方には一切視線が行かずに行っていました。

視線だけではなく物を触って大きさを確かめたり、移動の時も机を常に触って場所を確かめながら行っています。勿論取り直しができるからこそなのでしょうが、それが身体に沁みついているかのような動きで本当に感心です。

煙草を吸う時も先端を確認して火をつけていましたが、なるほど確かに長さがわからないからちゃんと先端の位置を指で把握しないと火のつける場所がわからないのかと発見がありました。

きっと盲目の人の所作を丁寧に研究していったからこそできるんだろうなと思いました。

ただ、カメラでそんなに喜ぶかな??

ケンタが良い人過ぎて

同い年のケンタとユウキはすぐに仲良くなります。

同い年だからなのかもしれませんがケンタはユウキに対してかなり親切。まるで昔からの仲間の様です。

職場では先輩として色々教えるのもわかりますが、ユウキへの気遣いが半端ない。通勤で一緒になったら肩を貸して走ってみたり、気さくに接してみたり。

そして最後はパセリを一つまみ・・・。

世の中彼みたいな人であふれかえったら優しい世界になるだろうなー。

特別扱いはせず一人の人として接する

今回の作品では障害に対して腫物扱いをするわけでもなく、特別な扱いをするでもなく終始一人の普通の人としてユウキに接しているケンタと店長。

正直、自分だったら盲目の人が「料理を学びたい」と来ても追い返してしまいそうです。包丁が使えるのかもそうですが、「見えないから盛り付けもできないだろうな」とか、「危険なものが多い調理場で目の見えない人がいたらぶつかって危険だろうな」とかおもっちゃうと思うんですよね。それを熱意に負けたところもあるのかもしれませんが、試用期間といえども雇っている店長。障害があるからダメではなく、一人の人として接しているように感じます。

また、雇用した後もユウキを過剰にサポートするわけでもありません。印象的なのはユウキが出来上がったパスタを床にばらまいた時。ケンタが戻ってきてその光景を見ますが、「とりあえず早く片付けろよ、それ」といいユウキは「てつだえよ~」と返します。一見すると手伝うわけでもないケンタがひどい人のようにも捉えることができますが、そのあとのユウキの返答を聞くと二人の仲の良さがうかがえます。決して意地悪での発言ではなく、やれることはやってもらうというスタンスなのでしょう。それが一人の普通の人としてユウキをみているということなのかなと。

still dark

ユウキはパスタづくりをほとんどものにしていたと思われます。その証拠に作り終えたパスタをケンタと店長は黙々と食べていました。美味しくなければ捨ておくこともできます。

しかし、残念ながらユウキは採用されることがありませんでした。それは仕上げにかけるパセリを忘れていたから。それはケンタが叩かれた後にユウキも気づいてしまいます。いくら美味しくできても未完成品。

勝手な予想で「無事に作り上げて採用され、その店で働くエンド」と思っていましたが、それはいい意味で裏切られました。「人生そんなにうまくはいかない」ということを想わされたのと、一貫して特別扱いをしないという点に感心をしました。

そしてこのタイトルの『still dark』の意味「まだ暗い」につながるのかなと。

試験に落ちてしまったために明るい仕事生活にはならずに、憧れの料理人にもなれずいまだに夢がかなえられていない状態。つまり、まだ暗い状態なのかと。

でも、最後のシーンで彼は履歴書を手に再度あの店を訪れています。

暗い場所から明るい場所へ行くために再度彼は挑戦をするのでしょう。

次こそは合格してほしい!

さいごに

今回は短編映画の『still dark』を紹介させていただきました。

とてもいい作品なので皆さんにも是非見てもらいたいと思います。

ただ、DVDにはなっていなさそうなのでAmazon prime videoから覗いてみてください。

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