高血圧の治療では、ARBやCa拮抗薬、利尿薬など、1種類の薬だけでなく、2種類以上の薬を組み合わせて使うことがあります。
「薬を2種類も飲んでいるけれど、血圧がかなり悪いの?」
「1種類の薬をたくさん飲むより、2種類に分ける意味があるの?」
このように疑問に思う人もいるかもしれません。
実際には、高血圧の治療では異なる作用を持つ薬を組み合わせて、効率よく血圧を下げるという考え方があります。
今回は、高血圧で薬を2種類以上使う理由や、よく使われる組み合わせ、注意したい組み合わせについて分かりやすく解説します。
高血圧の薬は、なぜ2種類以上使うの?
高血圧の薬を1種類使っても、十分に血圧が下がらないことがあります。
その場合には、
- 薬の量を調整する
- 別の薬に変更する
- 作用の異なる薬を追加する
といった方法があります。
特に、異なる仕組みで血圧に作用する薬を併用することで、それぞれの特徴を活かしながら、十分な降圧効果を得ることが期待できます。
JSH2025でも、降圧が不十分な場合には、主要な降圧薬を早めに併用することが推奨されています。
つまり、2種類以上の薬を使うことは、単純に「高血圧が重症だから薬を増やしている」というわけではありません。
必要な血圧まで下げるために、複数の薬を使うことがあるということです。
薬を組み合わせると、なぜ効果が高くなる?
血圧は、血管の収縮、心臓から送り出される血液量、体内のナトリウムや水分量など、さまざまな要素によって決まります。
降圧薬にも、それぞれ異なる作用があります。
例えば、
- ARB → 血管を収縮させるアンジオテンシンⅡの作用を抑える
- Ca拮抗薬 → 血管を広げる
- 利尿薬 → ナトリウムや水分の排泄を増やす
- β遮断薬 → 心拍数や心臓の働きを抑える
といった違いがあります。
このように作用の異なる薬を組み合わせることで、複数の方向から血圧に働きかけることができます。
また、1種類の薬を増量する方法だけでなく、別の薬を追加することで、それぞれを適切な量で使いながら治療できる場合もあります。
ただし、併用すれば必ず副作用が少なくなるわけではありません。
実際には、血圧の下がり方や副作用、腎機能、電解質などを確認しながら調整します。

高血圧ではどんな薬を組み合わせる?
代表的な組み合わせとして、
| 組み合わせ | 特徴 |
|---|---|
| ARB・ACE阻害薬 + Ca拮抗薬 | 血管に異なる仕組みから作用する |
| ARB・ACE阻害薬 + 利尿薬 | 血管への作用と、ナトリウム・水分排泄を組み合わせる |
| Ca拮抗薬 + 利尿薬 | 血管を広げる作用と、体液量を減らす作用を組み合わせる |
などがあります。
ただし、実際の選択は一律ではありません。
腎臓や心臓の状態、年齢、電解質、心拍数、ほかに使用している薬などを考慮して、治療内容を決めます。
逆に、一緒に使わないほうがいい組み合わせは?
薬は、数を増やせばよいというわけではありません。
特に注意したいのが、
ARB+ACE阻害薬
の組み合わせです。
どちらも血圧を上げる仕組みに関係するRAS(レニン・アンジオテンシン系)を抑える薬ですが、基本的にこの2種類を併用することは推奨されません。
血圧をさらに下げることだけでなく、腎機能やカリウムなどへの影響も考える必要があるためです。
このように、降圧薬には相性のよい組み合わせだけでなく、避けるべき組み合わせもあります。
2種類の薬を使うとき、最初から2種類なの?
以前は、「まず1種類の薬から始めて、効かなければ追加する」という考え方が一般的でした。
現在でも1種類から治療を始めることはありますが、血圧の高さや患者さんの状態によっては、早い段階から2種類を使うこともあります。
JSH2025では、降圧が不十分な場合に主要な降圧薬を早めに併用することが推奨されています。
一方で、すべての患者さんに最初から2種類を使うわけではありません。
年齢や血圧の程度、合併症、副作用のリスクなどを考慮して、治療の進め方を決めます。
「配合剤」ってどんな薬?
2種類以上の成分を使う場合でも、必ずしも薬を2錠、3錠と別々に飲むとは限りません。
降圧薬には、**異なる成分を1つの錠剤にまとめた「配合剤」**もあります。
例えば、ARBとCa拮抗薬を1錠にまとめた薬などがあります。
配合剤には、
- 飲む錠数を減らせる
- 薬を飲み忘れにくくなる
- 複数の薬を続けやすくなる
といったメリットがあります。
ただし、薬の量を細かく調整したい場合などには、それぞれ別の薬を使うこともあります。
そのため、「2種類の薬を使う=2錠飲む」というわけではないことも覚えておくとよいでしょう。
2種類以上の薬を使っている=高血圧が重症なの?
薬を2種類、3種類と使っていると、「自分の高血圧はかなり重いのでは?」と心配になるかもしれません。
しかし、薬の種類や錠数だけで高血圧の重症度を判断することはできません。
1種類の薬を増量するよりも、異なる作用を持つ薬を組み合わせたほうが適した治療になる場合もあります。
また、心臓病や腎臓病などの合併症があれば、血圧以外の目的も考慮して薬を選ぶことがあります。
そのため、
「薬が2種類になった=病気が急に悪化した」
とは限りません。
重要なのは、薬の数ではなく、必要な血圧を安全に維持できているかです。
薬を増やすときに気をつけること
薬を追加するときには、血圧が下がるかどうかだけでなく、安全に使用できるかも確認します。
例えば、
- 血圧が下がりすぎていないか
- 立ちくらみやふらつきがないか
- 腎機能に変化がないか
- カリウムなどの電解質に異常がないか
- 心拍数が下がりすぎていないか
- ほかの薬との相互作用がないか
などを確認します。
特に利尿薬やRAS阻害薬などを使用している場合には、腎機能や電解質の状態を確認しながら治療することがあります。
また、β遮断薬を使用する場合には、心拍数や呼吸器疾患なども考慮します。
このように、薬を追加した後も血圧と体の状態を見ながら、必要に応じて治療を調整していきます。
高血圧の薬は、使いながら調整していく
高血圧の治療では、最初に決めた薬をずっと同じように使うとは限りません。
血圧が十分に下がらない場合には、薬の量を調整したり、別の薬を追加したりします。
反対に、血圧が下がりすぎたり、副作用が問題になったりした場合には、薬を減らしたり変更したりすることもあります。
つまり、治療は薬を決めて終わりではなく、その後の血圧や体の状態に合わせて調整していくものです。
では、薬をきちんと飲んでいるのに、なぜ血圧が下がらないことがあるのでしょうか?
次の記事では、「血圧の薬を飲んでいるのに下がらないのはなぜ?」という疑問について、飲み忘れや生活習慣、測定方法、薬の効き方など、さまざまな原因から解説します。
まとめ
高血圧では、1種類の薬だけで十分な効果が得られない場合、異なる作用を持つ薬を組み合わせて治療することがあります。
一方で、ARBとACE阻害薬のように、基本的に併用しない組み合わせもあります。
また、薬の数が多いからといって、必ずしも高血圧が重症というわけではありません。
大切なのは、薬の数ではなく、その人の状態に合わせて治療を調整し、安全に血圧をコントロールしていくことです。


コメント