今回は先週の記事の流れでACPについて書かせていただこうと思います。
最初に要点をまとめてしまうと、
- 高齢の家族がいる人は最後の時の治療をどこまで行うか必ず話し合おう。
- ACPを行うには自分の現状把握と自分の希望を確認する。
- 1度話し合いをしたらそれで終わりではない。
という内容になります。
ACPってなに?
ACP(Advance Care Planning)とは、今後の医療やケアについて、本人を主体として家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みのことです。
厚生労働省は2018年に「人生会議」という愛称をつけ普及活動を行っています。
右のものがロゴマークで、さらにACPに関する広告ポスターも作成されています。
いずれも厚生労働省のHPから確認をすることができます。
このように、医療現場がすすめているだけでなく、国が「もしもの時」のためにACPをすすめているのです。


なぜACPが必要なの?
「いざという時になったらその場できめればいいじゃないか」
と思われる方は多いと思います。
しかし、その「いざという時」は突然やってくるだけでなく、意思決定すべき本人が意識があるかどうかはわかりません。
本人の意識がない場合はだれが代わりに意思決定をするかというと、ご家族になります。
意識がないときだけではなく、認知症で意思決定能力が十分でないと判断された場合も、決定するのはご家族になります。
人生の最終段階にある患者の約70%は意思決定が難しい状態となっているそうです。
そんな中、何も話し合いをしていない場合家族は困ってしまいます。なぜなら、高侵襲を加えて生かすように努力してもらうのも、これ以上苦しまないようにだけ最期の時を過ごさせるのも家族であるあなたが選ばなくてはいけません。
そうならないように、なるべく多くの人が参加して本人の意思を確認しておくことが重要となります。
厚生労働省関連のページでとてもいい記事があったのでこちらを一度お読みください。
ACPを行うべきタイミング
ACPを行うタイミングについては特にいつがいいというものは明記されていません。
しかし、早すぎても適当になり、遅すぎるとすでに意思決定能力のない状態になりかねません。
個人的には前の記事(下記)でも書いたように80歳を超えたらいつお迎えがきてもおかしくないため、どんなに遅くても80歳から始めたほうがいいと思っていますが、健康な人の場合であればです。
糖尿病や心不全、透析患者、何らかの理由で寝たきり状態の人はもっと早く60代で話し合いを始めるべきだと思っています。
また、癌を宣告された人(ステージにかかわらず)、酸素を吸って生活をしている人(HOT導入者)、心筋梗塞の治療を受けた人、脳梗塞を起こした人はもうそのタイミングでACPを行いましょう。理由は、癌の病勢悪化で全身転移する可能性、酸素化が悪くなり呼吸困難に陥る可能性、再度の心筋梗塞・脳梗塞で致命的になる可能性があるからです。
あくまでこれは私一人の個人的な意見ですが、自分が望まない治療をされないように、他の家族に治療を選択させるという精神的負担をかけないように早めに考えてほしいと思っています。
ACPを作成する前に
もし、この記事でやる気を出していただければ幸いですが、まずは何をすればいいでしょうか。
それは、あなた本人の現状を把握することと自分がどうしたいかを考えておくことです。
現状の把握
他の病院に通院中の方をたまたま私が診察をする時があります。その時に必ず効くのが、今までにかかった病気や現在治療中の病気、使用中の薬です。(他にもアレルギーや喫煙歴などもききますが・・・。)
その中で正しく自分の病気と飲んでいる薬を把握している方は1割もいません。
普通に考えると「そんなわけないでしょ。自分の病気だよ?」と思われるでしょう。
しかし、本当に皆さん把握していないのです。
話はそれますが、多いのが次のようなやりとり。
①病気を病気と思っていない
患者:「びょうきはないですね」
医者:「じゃあ今は何もお薬はのまれてないですか?」
患者:「いや、血圧を下げる薬とコレステロールが高いって言われて薬を飲んでいます」
医者:「・・・高血圧と脂質異常症があるんですね」
②いわないと思い出さない
患者:「病気は他にはないです」
医者:「手術の痕があるようですが?」
患者:「あっ、むかーしに盲腸っていわれて手術したみたい」
医者:「・・・ちゃんと覚えておいてください」
③薬は「のんでいる」ということしか覚えてない。
患者:「薬は何種類か飲んでいます」
医者:「何を飲まれていますか?」
患者:「薬手帳持ってこなかったからわかんないな」
医者:「・・・受診するときは必ず持ってきてください」
④薬を何で飲んでいるのか知らない
医者:「この血をサラサラにする薬はなんで飲んでるんですか?」
患者:「えっ、そんなの飲んでますか?」
医者:「心筋梗塞とか脳梗塞とかされていますか?」
患者:「いや、してないね。なんで飲んでるのかな?」
医者:「(こっちが聞きたいんだよ)」
もっといろいろなパターンがあるんですけどね、紙面たりなくなるので代表的なもので。
さて、これを読んでいるあなたもどれかに当てはまりませんか?もしくは一緒にACPを作ろうと思っている両親に聴いてみてください。どれかに当てはまる可能性が高いです。
そんな状態の人は自分の病気の現状を把握はできていません。
まず、通院中の方は現状の自分の病気の状態を医師に確認しておきましょう。多くの方はそこまで深刻にならなくてもいいでしょうが、一部では楽観していただけという場合もあります。
ちなみによくないことですが、忙しいと医者側も適当に「変わりないですよ」で終わらせる可能性があります。「ACPを考えたいので」と一言付けくわえていうと、忙しくても時間を取ってお話してくれるかもしれません。
自分がどうしたいかを考える
いきなり言われてもとおもうでしょうが、ACPを作らなければ病院でいきなり聞かれるのです。冷静でまともに考えられる平常なときに考えておくことをお勧めします。
厚生労働省はACP・人生会議についてのページをもっており、ここを参考にしていただけるとわかりやすいと思います。(該当HPはこちら)
自分の受けたい医療・介護を明確にする
人生の最期をどのような形でむかえたいでしょうか?
あまり病院でひっそり孤独に迎えたいという人はいないと思いますが、様々な理由で病院を選ぶ人はいます。多くは「これ以上家族に迷惑をかけられない」「家に帰っても不安だから病院がいい」などです。
場所だけではなく、誰と最期を一緒に過ごしたいか、何を一番最優先したいかなどを考える必要があります。
勿論、自分一人の意見ではだめです。家で最期を迎えたくても、家族が受け入れないケースもたくさんあります。(そうなる前の人間関係が大きく影響します。)
ですが、まずは自分がどうしたいかを考えておきましょう。
逆に嫌なことも考える
前述した通り、自分がこうしたいとおもっても完全にそうなるかはわかりません。
そこで、「絶対にこうされたくない」ということも考えておきましょう。
代理者を決める
最期のステージに立った時にすでに意思を伝えられない状態に陥っていれば意味のないこと。
必ず代理で伝えてくれる人を決めましょう。
基本的には配偶者、それがだめなら実子(または親)、兄弟、孫となりますが、そもそも血縁者がすでにいない場合はかかりつけの医者や訪問看護、介護関係の方から選んでおきましょう。
実際に集まって作成する
事前に自分の考えを作っていればあとは同じことをみんなで共有すれば完了します。
しかし、自分一人で考えている時には無かった切り口や視点が現れるため、思い描いたものと変わる可能性があります。
意固地にならずに周りの意見も受け入れましょう。
やるべきことは、
- 今後の治療の希望
- 希望しないこと(やってほしくないこと)
- どこで最期を迎えたいか
- 延命治療・蘇生治療をどこまでするか
※延命治療:人工呼吸器装着、鼻からの管での強制栄養や点滴栄養、血圧をあげる薬(昇圧薬)の使用
※蘇生治療:心臓マッサージ、人工呼吸器装着
を決めておくことと、代理決定者を選出することです。
定期的な見直しを
ACPは一度作って終わりではありません。
その時々でやはり事情が変わってくるもの。そうなると患者本人の意志も変わってしまいます。それなのに古いものを採用して本人の今の意志と反する行動をとらないようにしなくてはいけません。
そのために、定期的に作り直す必要があります。
できれば半年に1回、最低でも1年に1回は再確認をしましょう。
患者の心情が変わるタイミングとしては、配偶者の死や新たな命の誕生などがあります。
配偶者がいれば家で最期を迎えたかった人もその配偶者が先に亡くなってしまえば家に戻る理由がなくなります。
新しい命が生まれれば、または生まれそうであれば特定の年まで見守りたいという気持ちがでてきても不思議ではありません。
定期的に意思を確認することはとても重要なことです。
さいごに
この記事だけでは不足が多いかもしれませんが、上記の厚生労働省のHPなどで定期的に情報が更新されるためチェックをお願いします。
他人事ではなくいつかくる自分事と捉えて、これを機に誰かと相談をしていただければと思います。
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