今回は公的年金の給付について簡単にまとめていきます。
老齢給付
老齢給付には「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つがあります。
老齢基礎年金
受給資格期間が10年以上の人が65歳になったときに受け取ることができます。
受給資格期間
受給資格期間とは「保険料納付済期間」「保険料免除期間」「合算対象期間(カラ期間)」を足した期間のことをいいます。
保険料納付済期間:第1~3号被保険者として保険料を納付した期間と第1号被保険者で、産前産後期間の保険料を免除された期間。
保険料免除期間:第1号被保険者で保険料を免除された期間。(法定免除、申請免除、学生納付特例制度、納付猶予制度で保険料を免除または猶予された期間)
合算対象期間:受給資格期間には反映されるのが、実際の年金の額には反映されない期間。
年金額
老齢基礎年金の年金額は816,000円となります。
これは780,900円に改定率1.045をかけた値になります。(1956年4月1日以前に生まれた人は改定率が1.042になります。)
上記は満額となるため免除期間がある場合は次の計算式となりますが、2009年3月までと4月以降で計算式が異なるためそれぞれの合算で年金額がきまります。
また、免除期間は法定免除期間と申請免除期間であり、合算対象期間や学生納付特例期間、納付猶予期間は年金額に反映されません。
2009年3月までの期間
816,000×(保険料納付済月数+A×1/3+B×1/2+C×2/3+D×5/6)÷480月
2009年4月以降の期間
816,000×(保険料納付済月数+A×1/2+B×5/8+C×3/4+D×7/8)÷480月
A:全額免除月数
B:3/4免除月数
C:半額免除月数
D:1/4免除月数
上記の計算で端数処理は1円未満を四捨五入されます。
繰上げ受給・繰下げ受給
繰上げ受給は65歳よりも早く年金を受け取ること。ただし、60歳から64歳の間。
繰上げ受給を行うと、繰り上げた月数×0.4%が年金額から減額される。
(1年早く受け取ると、12カ月×0.4%=4.8%の減額)
繰下げ受給は65歳よりも遅く年金の受け取りを行うこと。ただし、66歳から75歳の間。
繰下げ受給を行うと、繰り下げた月数×0.7%が年金額に増額される。
(1年遅く受け取ると、12カ月×0.7%=8.4%の増額)
付加年金
第1号被保険者のみの制度で、任意で月額400円を国民年金保険料に上乗せして納付することによって、付加保険料の納付月数×200円が老齢基礎年金に加算される。
※付加年金と国民年金基金の併用はできない。
老齢厚生年金
厚生年金から支給される老齢給付のうち、60歳から64歳までに支給される老齢給付を特別支給の老齢厚生年金、65歳以上に支給される老齢給付を老齢厚生年金と言います。
特別支給の老齢厚生年金には加入期間に応じた金額となる定額部分と、在職時の報酬に比例した金額となる報酬比例部分に分かれます。
受給要件
特別支給の老齢厚生年金
60~64歳で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているもので、厚生年金の加入期間が1年以上の者。
老齢厚生年金
65歳で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているもので、厚生年金の加入期間が1か月以上の者。
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げ
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金保険の支給開始年齢が5歳引き上げたら多ことによる混乱をさけるために作られたものです。そのため、特別支給の老齢厚生年金は支給開始年齢は生年月日によって段階的に引き上げられていき、最終的には65歳からの老齢厚生年金のみとなります。
女性は男性よりも支給開始年齢が5年遅れで引き上げられていきます。
引き上げは定額部分が段階的に1年ずつ繰り上がり、65歳までに達したら次は報酬比例部分が1年ずつ繰り上がっていきます。
年金額
特別支給の老齢厚生年金
定額部分として、1,701円×被保険者期間の月数(上限480月)
報酬比例部分としては2003年3月以前か4月以降かで計算式が変わります。
2003年3月以前:平均標準報酬月額(賞与を含まない)×7.125÷1000×被保険者期間の月数
2003年4月以降:平均標準報酬月額(賞与を含む)×5.481÷1000×被保険者期間の月数
これらを足したものになります。
また、一定の要件を満たした配偶者または子がいる場合には加給年金が加算されます。
老齢厚生年金
65歳に達すると、定額部分は老齢基礎年金に、報酬比例部分は老齢厚生年金に切り替わります。
当面の間は定額部分の額の方が老齢基礎年金の額よりも大きいため、減少分を経過的加算として補われます。
繰上げ受給・繰下げ受給
老齢年金と同様に繰上げ受給の場合「繰り上げた月数×0.4%」の減額、繰下げ受給の場合「繰り下げた月数×0.7%」が増額されます。
老齢厚生年金の繰上は老齢基礎年金の繰上と同時に行わなければなりませんが、繰下げに関しては老齢基礎年金の繰下げと別々に行うことができます。
加給年金
年金の家族手当のようなもので、厚生年金の加入期間が20年以上の人に、65歳未満の配偶者または18歳到達年度の末日までの子または20歳未満で障害等級1・2級に該当する子がいる場合、65歳以降の老齢厚生年金の支給愛指示から支給される年金のこと。
配偶者は234,800円、子は第一子・第二子は各234,800円、第三子以降は各78,300円となる。
振替加算
加給年金は配偶者が65歳に達すると支給が停止し、その代わりに配偶者の生年月日に応じた金額が老齢基礎年金に加算されます。(ただし、配偶者が1966年4月1日以前に生まれた場合に限られます。)
在職老齢年金
60歳以降も企業で働く場合の老齢厚生年金を言います。
60歳以降に会社から受け取る給与などの金額と年金月額が50万円を超えると老齢厚生年金の額が減額されます。
障害給付
病気やケガが原因で障害者となった場合、一定の要件を満たせば障害年金や障害手当金を受け取ることができます。
障害給付には国民年金の障害基礎年金と厚生年金の障害厚生年金の2つがあります。
障害基礎年金
1級と2級があります。
受給要件
- 初診日に国民年金の被保険者であること。または国民年金の被保険者であった60~64歳で国内に住んでいる。
- 障害認定日に障害等級1級または2級に該当すること。
※障害認定日は初診日から1年6カ月以内で傷病が治った日。治らない場合は1年6カ月を経過した日。
保険料納付要件
原則として、保険料納付済期間+保険料免除期間が全被保険者期間の2/3以上であること。
原則の要件を満たさない場合は直近1年間に保険料の滞納がなければOK。
障害基礎年金額
1級:816,000×1.25+子の加算額
2級:816,000+子の加算額
※子の加算額:第1子・2子は各234,800円、第3子以降は各78,300円
障害厚生年金
1級、2級、3級と障害手当金があります。
受給要件
- 初診日に厚生年金保険の被保険者であること。
- 障害認定日に障害等級1級~3級に該当すること。
保険料納付要件
障害基礎年金と同様。
障害厚生年金額
1級:A×1.25+配偶者加給年金額
2級:A+配偶者加給年金額
3級:A
障害手当金:A×2倍 (一時金で支給)
※Aは報酬比例部分の計算式と同じ。
遺族給付
被保険者または被保険者だった人が死亡した場合に、遺族の生活保障として遺族給付がある。
遺族給付には国民年金の遺族基礎年金と厚生年金の遺族厚生年金がある。
遺族基礎年金
国民年金に加入している被保険者などがなくなった場合、一定の要件を満たしているときは遺族に遺族基礎年金が支給されます。
受給できる遺族の範囲
死亡した人に生計を維持されていた子または子のある配偶者。
※子は18歳到達年度の末日までの子または20歳未満で障害等級1級または2級に該当する子
保険料納付要件
原則としては「保険料納付済期間+保険料免除期間」が全被保険者期間の2/3以上であること。
ただっし、原則の要件を満たさない人は直近1年間に保険料の滞納がなければOK。
遺族基礎年金額
816,000+子の加算額
※子の加算額:第1子・2子は各234,800円、第3子以降は各78,300円
寡婦年金・死亡一時金
国民年金の第1号被保険者の独自給付として、寡婦年金や死亡一時金を受け取ることができる制度がありますが、いずれか一方しかうけとれません。
寡婦年金
老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上、カラ期間は除く)を満たし、夫が年金を受け取らずに死亡した場合に妻に支給される年金。
夫が亡くなった場合に妻に支給される年金であるが、妻がなくなった場合は夫には支給されない。
受け取れる条件としては結婚して10年以上たつ場合で、受給期間は妻が60から65歳に達するまでとなる。
死亡一時金
第1号被保険者として保険料を納付した期間が、合計3年以上ある人が年金を受け取らずに死亡し、遺族が遺族基礎年金を受け取ることができない場合に支給される給付金。
遺族厚生年金
厚生年金保険の被保険者がなくなった場合で、一定の要件を満たしているときは、遺族は遺族基礎年金に遺族厚生年金を上乗せして受け取ることができる。
受給できる遺族の範囲
死亡した人に生計を維持されていた①妻・夫・子、②両親、③孫、④祖父母の準で受け取れる。
※夫・両親・祖父母が受給権者の場合、55歳以上であることが要件。受け取れるのは60歳から。
※子や孫は18歳到達年度の末日まで、または20歳未満で障害等級1級または2級に該当する場合。
遺族厚生年金額
老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4相当額。
被保険者月数
死亡した人の被保険者期間nの月数が300月に満たないときは、被保険者期間を300月とみなして遺族厚生年金の年金額を計算する。
中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算
一定の遺族には下記の加算があります。
中高齢寡婦加算
夫の死亡当時40歳以上65歳未満の子のない妻、または子がっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を受け取ることができない妻に対して、遺族厚生年金に一定額が加算される。ただし、妻が65歳になると老齢基礎年金が受給できるため、中高齢寡婦加算支給が打ち切られる。
経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算の打ち切りにより、年金が減少する分を補うための制度。
さいごに
今回は公的年金の給付について書き出してみました。
メモ書き程度ですが一人にでもお役に立てれば幸いです。
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