健康診断などで「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されると、何をすればよいのか不安になる人もいるでしょう。
脂質異常症の治療では、いきなり薬を飲み始めるとは限りません。
まずは食事や運動、体重、飲酒、喫煙などの生活習慣を見直すことが基本になります。
一方で、脂質の値や動脈硬化のリスクによっては、生活習慣の改善とあわせて薬による治療が必要になることもあります。
この記事では、脂質異常症と診断されたらまず何をすればよいのか、生活習慣の見直しから薬による治療を検討するまでの考え方を分かりやすく解説します。
まずは自分のリスクを確認する
脂質異常症と診断されたら、まず確認したいのが自分がどの程度、動脈硬化性疾患のリスクを抱えているのかということです。
前回の記事でも説明したように、LDLコレステロールや中性脂肪などの検査値が基準を超えていたからといって、全員が同じ治療を受けるわけではありません。

治療方針を考えるときには、脂質の値だけでなく、年齢、血圧、糖尿病、喫煙、腎臓の病気、これまでに心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたことがあるかといった情報も重要になります。
同じLDLコレステロールの値であっても、ほかの危険因子がある人とない人では、将来の動脈硬化性疾患のリスクが異なるためです。日本動脈硬化学会でも、脂質異常症の治療ではこうした危険因子を含めた包括的なリスク評価を行うことが重視されています。
そのため、脂質異常症になったら、
「LDLが高いから、下げなければいけない」
と単純に考えるのではなく、
「なぜ高くなっているのか」「ほかに動脈硬化の危険因子はないか」「自分はどの程度のリスクなのか」
を確認することが大切です。
そのうえで、生活習慣の改善だけで経過を見るのか、薬による治療も検討するのかを判断していきます。
生活習慣を見直す
脂質異常症の治療では、薬を使うかどうかにかかわらず、生活習慣を見直すことが基本です。
特に、食事、運動、体重、飲酒、喫煙などを確認します。
食事を見直す
脂質異常症では、食事の内容を見直すことが大切です。
特にLDLコレステロールが高い場合には、飽和脂肪酸の摂りすぎを減らすことが重要になります。肉の脂身やバター、生クリームなどに多く含まれるため、こうした食品を摂りすぎていないか確認してみましょう。
一方、中性脂肪が高い場合には、糖質の摂りすぎや飲酒などが関係することがあります。
野菜や魚、大豆製品などを取り入れながら、特定の食品だけを極端に減らすのではなく、食事全体のバランスを整えることが大切です。

運動を取り入れる
運動も脂質異常症の改善につながります。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を中心に、無理なく継続できる運動を習慣にすることが大切です。
運動は脂質だけでなく、体重や血圧、血糖などにもよい影響を与えるため、動脈硬化の予防という意味でも重要です。

体重を見直す
体重が増えている場合には、適正体重を目指すことも重要です。
特に内臓脂肪が多い場合、中性脂肪や血糖、血圧などにも影響することがあります。
ただし、短期間で急激に体重を落とす必要はありません。
食事と運動を少しずつ見直し、無理なく続けられる方法で体重を管理することが大切です。
飲酒を見直す
飲酒量が多い場合は、飲酒習慣を見直すことも大切です。
特に中性脂肪が高い人では、飲酒が数値に影響していることがあります。
「毎日飲む」「一度にたくさん飲む」といった習慣がある場合は、飲酒量や頻度を見直してみましょう。
喫煙している場合は禁煙を考える
喫煙は脂質そのものだけでなく、動脈硬化性疾患のリスクに関係します。
そのため、脂質異常症がある場合には、脂質の数値だけを見るのではなく、禁煙も含めて動脈硬化のリスクを減らしていくことが重要です。
このように、脂質異常症の生活習慣改善は「コレステロールを下げるため」だけではありません。
将来の心筋梗塞や脳梗塞などを予防するために、生活習慣全体を見直していくことが目的です。
生活習慣の改善だけでよい?
脂質異常症と診断された場合、まず生活習慣を見直すことが基本になります。
ただし、すべての人が生活習慣の改善だけで十分とは限りません。
LDLコレステロールがどの程度高いのか、中性脂肪がどの程度高いのかに加えて、糖尿病や高血圧、喫煙、腎臓の病気などの危険因子や、これまでに心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を起こしたことがあるかによっても、治療の考え方は変わります。
そのため、生活習慣を改善しながら経過を見る場合もあれば、最初から薬による治療を検討する場合もあります。
また、生活習慣を改善しても脂質の値が十分に下がらないこともあります。
特に、遺伝的な要因が関係している場合などは、食事や運動だけでは十分な改善が得られないことがあります。
つまり、脂質異常症の治療では、
「まず生活習慣を改善する」ことと「必要なら薬を使う」ことは、対立するものではありません。
生活習慣を見直しながら、自分の動脈硬化性疾患のリスクに応じて、必要な治療を選択していくことが大切です。 (日本動脈硬化学会HP:j-athero.org)

薬による治療が必要になるのはどんな場合?
脂質異常症では、食事や運動などの生活習慣を見直すことが基本ですが、生活習慣の改善だけでは十分ではない場合や、もともとの動脈硬化リスクが高い場合には、薬による治療を検討します。
では、どのような場合に薬が必要になるのでしょうか。
すでに動脈硬化性疾患になったことがある場合
心筋梗塞や狭心症、動脈硬化による脳梗塞などを経験したことがある場合は、再発を防ぐために脂質をより厳格に管理する必要があります。
このような場合には、生活習慣の改善だけで様子を見るのではなく、薬物療法を含めた治療を行うことが基本となります。
LDLコレステロールが非常に高い場合
LDLコレステロールが著しく高い場合には、単なる生活習慣だけではなく、家族性高コレステロール血症(FH)などの遺伝的な要因が隠れている可能性があります。
特に未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合には、FHを念頭に置いて評価することが重要です。FHと診断された場合には、生活習慣の改善と並行して薬物療法を開始します。
糖尿病や慢性腎臓病などがある場合
脂質異常症以外に、糖尿病や慢性腎臓病などの病気がある場合も、動脈硬化性疾患のリスクが高くなるため、脂質をより厳格に管理することがあります。
同じLDLコレステロールの値でも、こうした病気の有無によって治療方針が変わることがあります。
生活習慣を改善しても脂質の値が十分に下がらない場合
食事や運動などを見直しても、LDLコレステロールや中性脂肪が十分に改善しない場合には、薬物療法を検討します。
特に遺伝的な体質や、ほかの病気・薬剤などが脂質異常症に関係している場合、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られないことがあります。
治療を始めたら何を確認する?
脂質異常症の治療は、薬を飲み始めたら終わりではありません。
治療を始めた後は、脂質の値がどの程度改善したか、薬による問題が起きていないか、生活習慣を続けられているかなどを確認しながら、その人に合った治療を続けていきます。
血液検査で脂質の値を確認する
まず確認するのは、LDLコレステロールや中性脂肪などの脂質の値です。
薬を始めた後にどの程度改善したかを確認し、治療を続けるか、治療内容を調整するかを判断します。
特に大切なのは、単に「基準値に入ったか」だけではなく、その人のリスクに応じた治療目標を達成できているかという点です。
薬による副作用がないか確認する
脂質異常症の薬にも、種類によってさまざまな副作用があります。
薬を飲み始めてから体調に変化があった場合には、自己判断で薬を中止するのではなく、まず医師や薬剤師に相談しましょう。
症状や検査結果によっては、薬の種類や量を変更したり、別の治療方法を検討したりすることがあります。
生活習慣の改善も続ける
薬を飲み始めたからといって、食事や運動などの生活習慣を元に戻してよいわけではありません。
脂質異常症の治療では、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせて続けていくことが大切です。
無理な制限を長期間続けるのではなく、自分の生活の中で継続できる方法を見つけていきましょう。
定期的に治療を見直す
脂質の値や体の状態は、年齢や体重、ほかの病気、生活習慣などによって変化します。
そのため、一度治療を始めたら同じ内容をずっと続けるとは限りません。
定期的な診察や血液検査を通して、現在の治療が適切かどうかを確認しながら、その時々の状態に合わせて治療を調整していきます。
脂質異常症は自覚症状が少ないため、「症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、検査値を確認しながら長期的に管理していくことが重要です。
まとめ
脂質異常症の治療では、脂質の値だけでなく、動脈硬化のリスクを含めて治療方針を考えることが大切です。
まずは食事や運動、体重、飲酒、喫煙などの生活習慣を見直し、必要に応じて薬による治療を行います。
薬を始めた後も、血液検査や体調を確認しながら、生活習慣の改善とあわせて治療を続けていきます。
自覚症状がなくても、将来の動脈硬化性疾患を予防するために、長期的に管理していくことが大切です。


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